R4 予備試験論文 刑事訴訟法の振り返り

エドガーです。今回は令和4年の予備試験論文の刑事訴訟法の振り返りをしていきます。

 

・再現

設問1

1.本件捜索差押許可状の効力で、第三者の物を捜索、差押えできるか。

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  刑事訴訟法222条1項、102条2項

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  「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合」の検討

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  適法

 

設問2

1.乙のボストンバッグに本件捜索差押許可状の効力が及ぶか。

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  宅配物の判例の論証

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  肯定

 

2.効力が及ぶとしても、乙に対する羽交い締めは適法か。

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  「必要な処分」の定義

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  あてはめ

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  適法

 

・振り返り及び所感

まず、大きな論外ポイントが「場所」に対する令状で「物」を捜索することができるかという論証を書けていない点である。もともと、「場所に対する令状で物を捜索できるのは当たり前すぎだろー」とか考えていたため、この論証の論じる実益がわかっていなかった。しかし、Twitter有識者からいろいろ意見をもらった結果、平成29年の司法試験採点実感にもある通り、論じる必要性があった。以下、平成29年司法試験の採点実感(刑事系科目第2問)の引用。

刑事訴訟法が,捜索の対象を「身体」,「物」,「住居その他の場所」に分類し,これに従って捜索令状に処分の対象を特定して記載することを要求していることとの関連で問題となるとの問題意識が示されていない答案が少なくなかった。本件の論点についての基本的な考え方を示すと,「場所」に対する捜索令状の効力は,当該場所において通常使用に供される「物」との関係でも,それが当該「場所」に妥当する管理支配に服しているという意味において,当該「場所」に付属する,あるいは包摂されるものと言えるために,当該「物」にも及ぶと考えられる一方で,「場所」に及ぶ管理支配を排除する態様で第三者が管理支配する「物」については,当該令状によって制約されることとなる管理権に服するものでない以上,捜索すべき「場所」にあるとしてもその効力は及ばないと考えるのが一般的であろう。

 

「場所」に対する捜索差押許可状の効力が「物」に及ぶのかという問題意識を何ら示すことなく,直ちに刑事訴訟法第102条第2項を持ち出して,「ハンドバッグ内に差し押さえるべき覚せい剤等が存在している蓋然性が高いので捜索が許される。」旨論述する答案が相当数見られた。当該令状の効力がハンドバッグにも及ぶかどうかを検討し,効力は及ぶとした上で,更に実際に令状により処分を実施する場面では,同条同項が言わば加重要件として適用されると考え,本事例ではハンドバッグ内に差し押さえるべき証拠が存在する蓋然性が否定されれば捜索は許されないし,蓋然性が認められれば捜索は許される,との考え方は一つの考え方として成立し得るとしても,前記問題意識を持たずに,直ちに同条同項を持ち出して検討している答案は,捜索について正しく理解していないことをうかがわせる。

 

これは、試験委員に私が捜索について正しく理解していないことがばれてしまったということになる。試験委員からお墨付きの論外がここに誕生した。

さらにキャリーケースのチャックをあけたことも「必要な処分」として言及すべきだった。

設問2については、宅配物の判例の論証を書くまではよかったが、「受領した」といえるかどうかを本問の事例を踏まえて論じる必要があったかもしれない。(この辺りは、よくわかっていない。)

また、羽交い締めについては、「必要な処分」として適法かどうかが問題となるところ、Twitterでは羽交い締めを適法としたのは論外と言われているのを目にしたが、真偽は不明。適法にするにしろ、違法にするにしろ、理由付けが充実していればどちらの結論でもよいのではないか。自分自身の羽交い締めに対する考えが一般常識とかけ離れていないことを願いたい。

解答速報や他の方の再現では、甲を立会人とした点や甲に対する令状呈示で足りるのかという点にも触れているものがあった。個人的には、下線部の部分のみ論じれば足りるのではとか思っている。もし、そこまで論じることを要求するのならば、試験委員様、その部分にも下線部を引いてください。

 

・予想される評価について

設問1の論外さが尋常じゃないので、F。耐えればE。

 

こんな感じですかねー。今回の問題は、平成29年の司法試験とよく似た問題だったので、予備試験の対策においても司法試験の過去問までも手を伸ばすべきだと言えそうです。採点実感にはやっぱり、ためになることが書いてありますね。

 

≪今回の名言≫

『何事も達成するまでは不可能に見えるものである。』 ネルソン・マンデラ