R5 予備試験論文 刑事系の振り返り

エドガーです。今回は令和5年予備試験論文の刑事系の振り返りをしていきます。

 

*刑法


設問1
1, Xを山小屋に閉じ込めた行為に、監禁罪が成立しないか。
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 「監禁」とは、人を場所的に拘束して、移動の自由を奪うこと。
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 甲は、Xを山小屋という場所に拘束して、Xの移動の自由を奪っている。
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 したがって、甲は、「人」を「監禁した」といえるとも思える。
  
2, もっとも、Xは甲が山小屋の扉をロープで縛り、中からXが出られないようにした時から、甲が上記ロープをほどいた間、熟睡しており、その間は移動する意思がなく、移動の自由は奪われてないのではないか。
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しかし、実際に、甲はXを場所的に拘束しているのであり、Xが移動の意思を有するか否かで、犯罪の成否が変わるのは不合理である。
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したがって、監禁罪の保護法益である移動の自由は、可能的自由で足り、実際に移動の意思を有することは必要ではない。
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よって、上記の通り、甲は、Xを山小屋という場所に拘束して、Xの移動の可能的自由を奪っており、「人」を「監禁した」といえる。

3, また、甲は監禁罪の故意を有する。

4, よって、甲の上記行為に、監禁罪が成立する。

設問2
1, Xの携帯電話機をXの上着のポケットから取り出し、自分のリュックサックに入れた行為に、窃盗罪が成立しないか。

(1)「他人の財物」を「窃取」肯定。

(2)もっとも、甲はXの携帯電話をXの遠く離れた場所に捨てる意思であったことから、不法領得の意思が認められないのではないか。
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不法領得の意思論証
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まず、甲がXの携帯を持ちだすことで、Xは携帯電話を使用することができなくなるので、①権利者排除意思肯定。
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そして、確かに甲はXの携帯電話をXの遠く離れた場所に捨てる意思であった。しかし、携帯電話機のGPS機能によって発信される位置情報を利用し、Xの親族等にXの死体の発見を困難にする意思があった。そして、②利用処分意思とは、財物から何らかの効用を得る意思があれば足りるとされているから、甲は携帯電話のGPS機能によりXの死体発見を困難にするという効用を得る意思があり、②利用処分意思肯定。

(3)よって、甲の上記行為に、窃取罪が成立する。

2, 眠っているXの首を両手で強く絞め付けた行為に、殺人罪が成立しないか。

(1)まず、人の首を強く絞める行為は、その者を呼吸困難に陥らせ、死に至らせる危険性の高い行為である。したがって、甲がXの首を強く絞めつけた行為は、殺人罪の実行行為性が認められる。そして、その後Xは死亡しているから、「人を殺した」といえる。

(2)もっとも、甲の上記行為とXの死亡の結果発生の間には、Xは首を絞めつけられ意識を失った後に、甲に証拠隠滅目的で崖に運ばれ、崖下に落とされるという介在事情が存在するが、甲の上記行為とXの死亡の結果発生の間には因果関係は認められるのか。
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因果関係論証
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まず、上記の通り、甲がXの首を強く絞めつけた行為は、死に至らせる危険性の高い行為である。
そして、確かにXの死因は、崖から落とされたことによって、頭部を地面に強く打ち付け、頭部外傷を負ったことにあり、介在事情の結果発生の寄与度は大きい。もっとも、人を死亡させた後に、崖の下に死体を落として証拠隠滅する行為は通常ありうることであり、異常性は低い。そうだとすれば、甲がXの首を絞めた行為により、崖からXを落とすという行為が誘発されたといえる。
したがって、甲がXの首を絞めた行為の危険性が、Xの死亡という結果として現実化したといえる。
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よって、甲がXの首を絞めた行為とXの死亡の結果発生の間に因果関係が認められる。

(3)ここで、甲はXの首を絞めた行為により、Xを死亡させたと認識しているが、実際には、Xは崖から落とされて、地面に頭部を強打したことにより死亡しており、甲には因果関係の錯誤がある。もっとも、甲の認識した因果関係も、実際に起きた因果関係も殺人罪の同一構成要件内で符号しているから、甲は規範に直面していたといえ、故意は阻却されない。

(4)よって、甲の上記行為に、殺人罪が成立する。

3, Xを崖下に落とした行為に過失致死罪が成立するか。
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甲は、まだ生きているXを既に死んでいると軽信して、Xを崖から落とし、Xに頭部外傷を負わせ、死亡させているので、「過失により人を死亡させた」といえ、甲の上記行為に過失致死罪が成立する。

4, Xの財布から、現金3万円を抜き取った行為に、窃盗罪が成立しないか。

(1)「他人の財物」を「窃取」肯定。

(2)もっとも、甲は、既にXは死亡していると誤信しているから、窃取罪の故意が認められないのではないか。
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ここで、死者には占有の事実も占有の意思もないから、死者の占有は認められない。もっとも、被害者の生前の占有は、①被害者を死亡させた犯人との関係では、②被害者の死亡と時間的場所的に近接した範囲内にある限り、刑法上保護されると解される。
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甲の認識では、Xと甲は死亡した被害者とその犯人の関係にある(①充足)。そして、甲がXの首を絞めて死亡させたと誤信した時点は午後6時20分であり、Xが現金3万円を抜き取ったのは、その5分後である午後6時25分であり、時間的に近接している。(場所的近接性はなんて書いたか不明)(②充足)
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したがって、甲は上記を認識していたといえるから、占有侵奪の意思があり、窃盗罪の故意が認められる。

(3)よって、甲の上記行為に、窃盗罪が成立する。

5, 罪数
甲には、Xの携帯電話機についての窃盗罪(①)、殺人罪(②)、過失致死罪(③)、Xの現金3万円についての窃盗罪(④)が成立し、①と④は包括一罪となり、③は②に吸収される。
そして、①と④の包括一罪と②は、併合罪となる。

 

【反省点】
・死者の占有の部分で、場所的近接性をテキトーに認定したこと。
→山小屋と崖は、歩いて100mという事情を使うべきだった。
・また、死者の占有は今回故意の中で問題となっているから、最後の占有侵奪の意思までの持っていき方に注意。

 

【予想評価】 願望A。まあ、B~C。


刑事訴訟法(全体的にあまり覚えていない…)


設問1

1, 下線部①につき、本件住居侵入・強盗致傷の事実及び本件暴行の事実で、甲を勾留することは、逮捕前置主義に反し、許されないのではないか。

(1)逮捕前置主義の論証(不必要な身柄拘束の回避目的)

(2)逮捕が前置されているかは、人単位でみるか、事件単位でみるか
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 刑訴法は、逮捕について「被疑事実」(なんか条文をあげた)や「犯罪事実」(なんか条文をあげた)という文言を使っていることから、事件基準。
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 また、同一の「事件」に当たるかは、身柄拘束の蒸し返し防止と基準の明確性の観点から、実体法上の一罪となるかで判断する。
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本件では、本件住居侵入・強盗致傷の事実と、本件暴行の事実は、実体法上の一罪となる関係にはない。

(3)したがって、本件では本件暴行の事実について逮捕が前置されていないから、本件住居侵入・強盗致傷の事実及び本件暴行の事実で、甲を勾留することは、逮捕前置主義に反し、許されないとも思える。

2, もっとも、逮捕前置主義の趣旨は上記の通り、不必要な身柄拘束を防止し、被疑者の保護を図ることにある。

そこで、本件につき、本件住居侵入・強盗致傷の事実につき適法に逮捕がなされ、勾留されるのであるから、本件暴行の事実であえて逮捕を前置すると、本件暴行の事実の逮捕期間の分、身柄拘束期間が長くなる。また、逮捕前置主義は、比較的短期の身柄拘束である逮捕を先行させ、その期間内に逮捕の必要性や嫌疑がなくなった場合は、勾留前に被疑者を釈放して、不必要な身柄拘束を防止することを前提にしている。しかし、別の事件につき適法に逮捕がされ、勾留される場合においては、逮捕を前置し、その期間に逮捕の必要性や嫌疑がなくなった場合でも、別の事件で勾留されているから、直ちに釈放されることにはならない。
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本件でも、甲は本件住居侵入・強盗致傷の事実について適法に逮捕がされており、本件住居侵入・強盗致傷の事実に付加して、本件暴行の事実で勾留しているから、逮捕前置主義の例外として、許される。

3, よって、裁判官は甲を本件住居侵入・強盗致傷の事実及び本件暴行の事実で勾留することができる。

 

設問2
1, 下線部②につき、甲を本件住居侵入・強盗致傷の事実で再勾留するものとして、再逮捕・再勾留禁止の原則の原則に反し、許されないのではないか。

(1)再逮捕・再勾留禁止の原則の論証

(2)もっとも、再逮捕は明文で許容され得ることが認められている(刑訴法199条3項参照)。
また、再勾留も逮捕に伴う手続きとして認められる場合があり得ると解する。しかし、厳格な身柄拘束期間の潜脱防止の観点から、その許容要件は厳格に解しなければならない。具体的には、①新証拠や罪証隠滅のおそれなどの新事情の出現より再捜査の必要性があり、②被疑事実の重大性等より、被疑者の受ける不利益と対比してもやむを得ない場合であり、③捜査機関に身柄拘束の不当な蒸し返しの意図がない場合に限り、再勾留は認められると解する。

 

(3)ア, 甲が釈放された後である同年10月6日に別事件で逮捕された乙が、本件住居侵入・強盗致傷について、甲と乙が共謀し、乙が実行犯となり、甲が換金する旨の役割分担して犯行に及んだことを供述した。また、乙の携帯電話機の解析によって本件住居侵入・強盗の事実につき、甲との共謀を裏付けるメッセージのやりとりが記録されていることが判明しており、乙の上記供述の信用性は高かった。そうだとすれば、本当に甲と乙の間で本件住居侵入・強盗致傷の事実について共謀がなされたかを捜査して確認する必要がある。
 したがって、本件では、①新証拠や罪証隠滅のおそれなどの新事情の出現より再捜査の必要性が認められる。

 

 イ, また本件住居侵入・強盗致傷は重大事件であり、社会的悪性が強いから、乙が再び身柄拘束を受けることとなる不利益と比較しても、再捜査をすることがやむを得ない場合といえる(②充足)。

 

 ウ, さらに甲は一回目の逮捕勾留では、一貫して黙秘しており、乙から得られる情報はなかった。それにもかかわらず、Pは甲の携帯電話機やパソコン等を解析したり、不審者に関する更なる聞き込みをしたりするなどの捜査を尽くしており、一回目の逮捕勾留において漫然と甲を身柄拘束していたわけではない。したがって、Pには、身柄拘束の不当な蒸し返しの意図があるとはいえない(③充足)。

 

4, よって、下線部②につき、甲を勾留することは再逮捕・再勾留禁止の原則の例外として許される。

 

【反省点】

・付加してなされた勾留請求の論点のところをもっと三段論法を意識して論述すべきだった。→だらだらと何を言いたいかわからない論述になってしまった。

・再逮捕・再勾留禁止の原則のところは、もっと②のあてはめを厚くすべきだった。→例えば、法定刑を引用する等。

→そもそも規範があいまいな部分も要改善。

 

【予想評価】 B~D(論点チックな問題だから予想困難)

 

 

今回は刑法も刑訴法も問題自体の難易度は低かったので、どこまで正確に書くかが重要になりそうです。それゆえに評価の予想もつかないですね(^ω^)