R5 予備試験論文 民事系の振り返り

エドガーです。今回は令和5年予備試験論文の民事系の振り返りをしていきます。

 

民法

設問1

1、BはAに対して、本件請負契約に基づく報酬債務履行請求として、250万円の支払いを請求することが考えられる。

 

2、これに対してAは、本件請負契約が締結された令和5年7月1日の時点において、すでに甲は本件損傷により修復不可能な状態となっていたことから、本件請負契約に基づくBの甲の修復債務は履行不能となっており、本件請負契約は無効であると反論する。

 ↓

確かに、本件損傷によりBの甲の修復債務は履行不能となっている。もっとも、契約の締結された時点において、一方の債務が原始的に不能であったとしても、当然に契約は無効とはならないと解されている(民法412条の2第2項参照)。

 ↓

よって、Aの上記反論は認められない。

 

3、次にAは、本件請負契約締結時において、自身は甲の状態につき錯誤があったことから、本件請負契約を錯誤取り消し(民法95条1項)すると反論する。

 ↓

本件では、Aは甲が本件請負契約締結時において、未だ修復可能な状態であると認識していたが、実際には甲は本件損傷により修復不可能な状態となっていたのであるから、「法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」(同項2号)がある。

そして、本件請負契約は、Bが甲の修復を行うことに対してAが報酬を支払うことを内容とするものであり、甲が修復可能かどうかは、AB間で確認されており、本件請負契約の内容となっていたといえ、上記事情は「表示」(同条2項)されていたといえる。また、上記の通り、甲が修復可能かは本件請負契約の前提事項であるから、上記錯誤は「重要なもの」といえる。

 ↓

もっとも、上記錯誤は、本件請負契約締結に当たり、Aが甲の保管方法を誤り、本件損傷を生じさせたにもかかわらず、甲の状態を確認することを怠ったことによるもので、Aの「重大な過失」(同条3項柱書)によるものといえる。

 ↓

また、本件請負契約締結においては、Bも甲の状態について修復可能と認識しているからBがAと「同一の錯誤」(同項2号)に陥っていたとも思える。

もっとも、Bは本件請負契約締結に当たり、何度もAに甲の状態について確認しており、それに対してAは「問題ない。」と回答していることから、Aの発言を信じて本件請負契約を締結したといえる。そうだとすれば、Bの甲が修復不可能な状態であると認識したのは、Aの過失行為によるものでこれに基づき錯誤取り消しを認めることは、信義に反することとなる。よって、Bも甲の状態について修復可能と認識していることをもって「同一の錯誤」に陥っていたとはいえない。

 ↓

よって、Aによる本件請負契約の錯誤取り消しは、認められず、Aの上記反論は認められない。

 

4、Aは、本件請負契約が有効であったとしても、甲が現に修復されていない以上、本件請負契約に基づく報酬を支払う義務はないと反論する。

 ↓

もっとも、本件請負契約に基づく甲の修復債務の履行不能は、Aが甲の保管に関し、標準的な保管方法に反した方法で保管し、甲に本件損傷を生じさせたことによるものである。そうだとすれば、本件の甲の修復債務の履行不能は「債権者の責めに帰すべき事由によって」(536条2項前段)生じたものといえ、Aは反対債務の履行である本件請負契約に基づく報酬支払義務を拒むことはできない。

 ↓

よって、Aの上記反論は認められない。

 

5、したがって、BのAに対する上記請求は認められる。

設問2小問(1)(時間なくて内容スカスカ)

1,DはCに対して、乙の所有権に基づく返還請求として、乙の引き渡し請求をすると考えられる。

 

2、もっとも、令和6月2日にCがBに対し、本件委託契約の契約条項(3)に基づき乙の返還を請求する旨の通知を発し、当該通知は同日中にBに到達している。そうだとすれば、BD間の乙の売買契約の時点では、Bは乙について処分権限を有しておらず、他人物売買(561条)であり、Dは無権利者から乙を買い受けたこととなり、本件売買契約により乙の所有権を取得しない。

 

3、次にDは、乙につき即時取得(192条)が成立し、乙の所有権を原始取得すると主張する。

 ↓

もっとも、DはBから未だ乙の引き渡しを受けておらず、また占有改定(183条)の方法では「占有を始めた」に当たらないと解されているから、BがDに対して「乙は、以後DのためにBが保管する」と告げていることをもって、Dが乙の「占有を始めた」とはいえない。

 ↓

したがって、乙について即時取得は成立しない。

 

4、よって、Dは乙の所有権を取得しないから、上記請求は認められない。

 

設問2小問(2)

1、小問(1)と同様に、DはCに対して、乙の所有権に基づく返還請求として、乙の引き渡し請求をすると考えられる。そして、BD間の売買契約は他人物売買である点も小問(1)と同様である。

 

2、ここで、DはBD間の売買契約につき、表見代理(112条2項)が成立し、乙の所有権を取得すると主張する。

 ↓

・本件委託契約の条項(1)により、Cは、Bに対し、乙をBの名において販売する権限を与えており、「他人に代理権を与えた者」といえる。

・そして、令和5年6月1日のCからBへの通知により、本件委託契約の条項(3)により、Bは乙の販売権限を失っているから、「代理権の消滅後」といえ、BはDに対し、200万円で売っているから、「その代理権の範囲外の行為」をしたといえる。

・本件売買契約の際、DはBに対し、本件委託契約の契約書を示して、Cから委託を受けてBは乙の売却権限を有している旨を説明している。そして、売買契約時、DはBが本件委託契約に基づく処分権限を現在も有していると信じていたため、Dは、Bが乙の処分の代理権があると信ずべき「正当な理由」があるといえる。

 ↓

したがって、112条2項により、表見代理が成立し、Dは乙の所有権を取得する。

 

3、よって、Dの上記請求は認められる。

 

【反省点】

・設問1の途中挿入→心証悪いのでは...

・設問2をもっと丁寧に論じるべき(←設問1で時間を使いすぎ)

・設問2小問2は、BがDに200万で売ったことをもって、権限外となると認定した部分は論外すぎる。

 

【予想評価】 D~E

 

 

*商法

設問1

1,まず、乙社は、本件総会についての議案の要領を本件総会の招集通知に記載することを請求したのに、本件招集通知に乙社が提案した議案の要領の記載がされなかったことが、「株主総会等の招集の手続」が「法令」に「違反」するとして、本件総会の決議取消事由になる(831条1項1号)と主張する。

 ↓

(1)305条1項の要件検討→充足

 

(2)また、本件招集通知に乙社が提案した議案の要領の記載がなされて、乙社が本件総会で上記内容の動議を提出できていたら、BではなくFが選任される可能性は十分に存在していたのであるから、本件招集通知に乙社が提案した議案の要領の記載がなされなかったことは、「違反する事実が重大」でないとはいえず、また「決議に影響を及ぼさないもの」ともいえないから、裁量棄却(同条2項)は認められない。

 

(3)したがって、甲社が本件招集通知に乙社が提案した議案の要領の記載をしなかったことは、305条1項本文に反し、本件総会の「招集の手続」が「法令」に「違反」するとして、本件総会の決議取消事由となる。

 

 

2、次に、乙社は、本件総会において、甲社が乙社の代理人となったEの本件総会の出席を拒み、Eが本件総会に出席できなくなったことが「株主総会等」の「決議の方法」が「法令」に「違反」するとして、本件総会の決議取消事由となると主張する。

 

(1)まず、株主総会における議決権行使の代理人の資格を甲社の株主に限る旨の甲社の定款自体が、代理人による議決権行使を認める310条1項前段に反しないか。

 ↓

代理人の資格を株主に限定する目的→株主以外の第三者が総会に参加して議事をかく乱することを防止するため→合理的

また、株主である者を代理人とすれば議決権の代理行使はできるのであり、一切議決権の代理行使を認めないものではない→相当程度の制限

したがって、代理人の資格を株主に限定する定款は、合理的目的のための相当程度の制限であれば、310条1項前段に違反しないと解される。

 ↓

甲社の定款は合理的目的のための相当程度の制限である(ほぼ、上記と同内容をなぞっただけ)から、310条1項前段に反しない。

 

(2)もっとも、議決権の行使は、株主総会という会社の方針や方向性を決定する場で自己の意思を反映する点で株主にとって重要な権利である。また、代理人の資格を株主に限定する目的代理人の資格を株主に限定する目的は、上記の通り、株主以外の第三者が総会に参加して議事をかく乱することを防止することにある。そこで、株主以外の代理人であっても議事をかく乱するおそれがなく、かつ、その者による議決権の代理行使を認めなければ、事実上株主の議決権行使の機会を奪ってしまうといえる場合には、定款の効力は及ばないと解する。

 ↓

Eは、乙社の従業員であり、また乙社の唯一の取締役のDの子であるから、乙社及びDによるコントロールが及んでいるといえ、本件総会に参加しても議事をかく乱するおそれはない。

 

また、甲社の株主である乙社は法人であり、乙社自身が本件総会に参加することは観念できず、誰かを代理とする必要がある。そして、乙社の唯一の取締役がDであるが、Dはスケジュールの都合上、本件総会に参加することはできなかった。そうだとすれば、乙社は他にE以外の従業員しか存在しないのであるから、Eによる議決権の代理行使を認めなければ、乙社は議決権を行使できなくなるといえる。

 

したがって、本件では、Eによる議決権の代理行使を認めても、議事をかく乱するおそれはなく、かつ、Eによる議決権の代理行使を認めなければ、事実上株主である乙社の議決権行使の機会を奪ってしまうといえる場合にあたり、Eの議決権行使について甲社の定款の効力は及ばない。

 

(3)よって、本件総会にEの出席を拒否したことは310条1項前段に反し、本件総会の「決議の方法」が「法令」に「違反」するといえる。

 

(4)また、上記の通り株主の議決権行使は上記の通り重要であり、本件ではこれが害されているので、「違反する事実が重大」でないとはいえず、裁量棄却も認められない。

 

(5)よって、上記乙社の主張は認められる。

 

設問2

1、まず、乙社は本件発行の無効の訴え(828条1項2号)を提起している。ここで、新株発行無効の訴えにおいては、明文で無効事由は定まっていないが、法的安定性、取引の安全の観点から、重大な法令・定款違反に限られると解する。

 

2、乙社は、本件発行は「特に有利な金額」(199条3項)によるものであり、甲社の株主総会の決議が必要(199条2項、201条1項)であるのに、乙社において株主総会の決議を欠いたことが無効事由にあたると主張する。

 

(1)新株発行は、資金調達のためになされるものであるから、時価よりも低い価格が望ましい一方で、既存株主の持株比率の維持も保護すべきである。そこで、「特に有利な金額」とは、公正価格よりも低い価格をいい、公正価格とは資金調達の目的が達せられる限度で既存株主に最も有利な価格をいう。

 

(2)本件では、丙社に発行された株式の払い込み金額は、公正な払い込み金額である1株当たり20万の2分の1にあたる1株当たり1万円である。

 →したがって、公正価格よりも低い価格といえ、本件発行は「特に有利な金額」によるものといえる。

 

(3)したがって、本件発行において甲社の株主総会の決議を欠いた点は、199条2項に違反する。

 

3、もっとも、公開会社においては非公開会社と比較して既存株主の持株比率の維持は重視されていない。また、乙社としては、甲社に対して損害賠償すれば足りるといえる。したがって、本件発行において甲社の株主総会決議を欠いたことは、重大な法令違反とはいえず、無効事由にあたらない。

 

【反省点】

・設問1は、議案要領記載の部分は、決議取消事由にあたるかをもっと検討すべきだった(?)→裁量棄却で論じた部分(←この辺は不明)

・設問1の議決権の代理行使は、定款自体の有効性のあてはめが謎。←そもそも、合理的目的に基づく相当程度の制限であるとして、三段論法で論じなくてもいいのか。

・設問2をもっと丁寧に論じるべき(←設問1で時間を使いすぎ)

 →今回は難易度が低い典型論点だったから、論点こぼしは痛すぎる...

 

【予想評価】 D~F(本当に設問2の論点落としがF直行なのかは不明)

 

 

民事訴訟

設問1

1、まず、訴訟①における、XのYに対する甲土地の所有権に基づく乙建物を収去して甲土地を明け渡すことを求める訴えから、甲土地についてのYの賃借権の不存在を確認することを求める訴えへの変更の法的性質が問題となる。

 ↓

(1)ここで、上記訴えの変更は、訴えの交換的変更であり、その法的性質は旧訴の取り下げと新訴の併合と解されている。

 ↓

そうだとすれば、上記訴えの変更により、XのYに対する甲土地の所有権に基づく乙建物を収去して甲土地を明け渡すことを求める訴えについては訴えの取り下げ(261条1項)がなされたといえる。そして、訴訟①については、XのYに対する甲土地の所有権に基づく乙建物を収去して甲土地を明け渡すことを求める訴えについて第一審でX勝訴の判決を得ているから、Xは「本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者」(262条2項)にあたるといえる。

 

(2)そして、訴訟①におけるXのYに対する甲土地の所有権に基づく乙建物を収去して甲土地を明け渡すことを求める訴えと、訴訟②のおける訴えは、当事者がXとYで同一であり、訴訟物も甲土地の所有権に基づく返還請求としての甲土地明渡請求権で同一である。したがって、訴訟②における訴えは、「同一の訴え」にあたる。

 

(3)よって、訴訟②は262条2項に反するとして却下されるというのがYの主張である。

 

2、もっとも、以下により、上記Yの主張は認められない

 

(1)まず、262条2項が再訴禁止効を定めた趣旨は、判決に至るまでの裁判所の努力を徒労に帰せしめたことに対する制裁と訴権の乱用防止にある。

 ↓

 そうだとすれば、相手方の信義に反する行為により、再訴を余儀なくさせられたというような再訴を認めても上記趣旨に反しないと認められる場合には、「同一の訴え」に当たらないと解する。具体的には「同一の訴え」といえるためには、訴えの利益の同一性まで要すると考える。

 

(2)本件の訴えの変更は、訴訟①におけるXのYに対する甲土地の所有権に基づく乙建物を収去して甲土地を明け渡すことを求める訴えにおいてYが増改築部分も含む乙建物はAら3人の所有に属し、Yは所有していないと主張したことにより、XはYに対して上記訴えを維持することは不可能であると認識したことによるものである。それにもかかわらず、控訴審の判決が確定した後に、Yが再び増改築部分も含めて乙建物は自らの所有であると主張してきたのである。このようなYの行動は、信義に反し許されず、新たにXのYに対する甲土地の所有権に基づく乙建物を収去して甲土地を明け渡すことを求める訴えをする訴えの利益を有する。

 ↓

したがって、訴訟②における訴えは「同一の訴え」にあたらない。

 

(3)よって、訴訟②の提起は262条2項に違反するものでなく、却下されることはない。

 

設問2

1、XがYに対して、乙建物を収去して甲土地の明け渡しを求めることは、XY間でなされた本件和解の和解調書の効力(267条1項)により、許されないのではないか。

 

(1)まず、和解調書の効力が問題となる。

 ↓

和解調書は「確定判決と同一の効力を有する」とされているから、和解調書の効力として訴訟終了効のみならず、既判力(114条1項)も有すると解される。

 ↓

もっとも、和解は当事者双方の互譲により紛争の柔軟な解決を図るものであり、和解の前提となった事項についての当事者の意思表示に瑕疵がある場合に、裁判官がその瑕疵を確認しているものではない。そうだとすれば、和解の前提となった事項について当事者に意思表示の瑕疵がある場合は、取消しを認めなければ当事者を不当に害することとなる。

 ↓

そこで、和解調書は訴訟終了効のみならず、既判力も有するが、錯誤や詐欺などの意思表示の取り消しは認められるという、制限的既判力を有すると解する。

 

(2)そして、本件のXY間の和解交渉の際に、YはXに対して乙建物を賃貸して生計を立てていたが、現在居住している丙建物が取り壊されることになり、今後は自ら乙建物を店舗兼居宅として利用したいと虚偽の説明をして、Xはそれを信じやむを得ないと考え、本件の和解に応じている。しかし、実際には、丙建物が取り壊される予定はなく、YがDに対して乙建物を賃貸することを目的としていたのである。そうだとすれば、Xが和解に応じる基礎となった事情に錯誤があるといえ、和解に応じる意思表示を取り消すことができるといえる。

 

(3)したがって、XがYに対して、乙建物を収去して甲土地の明け渡しを求めることは、本件和解の和解調書の効力に違反しない。

 

2、そして、Xとしては、XがYに対して、乙建物を収去して甲土地の明け渡しを求める請求は訴訟①における第一審で勝訴しており、控訴審がそのまま継続していれば勝訴したと考えているから、新訴の提起ではなく、本件和解の無効を前提とした控訴審の期日指定の申し立てにより、乙建物を収去して甲土地の明け渡しを求めることが考えられる。

 

【反省点】

・設問1のYの主張の部分も、訴訟②の訴えは「同一の訴え」にあたり、262条2項に違反するものとして却下されると述べてから論じるべきだった(?)(あまり有意な差ではない気もする)。

・設問2の期日指定の申し立ての理由付けをもっと厚くするべきだった。旧訴の状態をそのまま利用できる等。

 

【予想評価】 B(あわよくばA)

 

民訴は去年の借りが返せたと思う反面、民法と商法がいまいちな出来です。民法は、もう少し基本に立ち返ることが大切なのかなと思いましたね。

 

R5 予備試験論文 労働法の振り返り

エドガーです。今回は令和5年予備試験論文の労働法の振り返りをしていきます。

 

*労働法

設問1

1, A社は、Bに対して、帰国後60か月以内に自己都合でA社を退職する場合は海外研修費用の全部又は一部を返還すること(以下、「本件条項」)を内容とする誓約書に基づいて、A社が負担した海外研修費用の返還を請求することが考えられる。

 

2, もっとも、本件条項は、「違約金を定め」たもの、または「損害賠償を予定する契約」であり、労基法16条に反し、無効とならないか。

 

(1)労基法16条の趣旨:労働者の足止め防止

   ↓

   実質的に「違約金を定め」たもの、または「損害賠償を予定する契約」であれば、労働者を足止めする効果を生じるから、労基法16条に反する。

   ↓

  そして、業務上の研修・留学費用は、本来、労働者が負担する必要のないものであるから、これにつき返還義務を負わせることは、実質的に「違約金を定め」たもの、または「損害賠償を予定する契約」といえる。

  ↓

  具体的に業務上の研修・留学に当たるか否かは、①研修と業務の関連性、②研修の一般的通用性、③研修に対する使用者の関与の程度を総合的に考慮して判断する。

 

(2)ア, まず、A社は宿泊業を営み、国内にとどまらず、国外においても広く事業を展開している。そうだとすれば、A社は外国人とも円滑にコミュニケーションをとれる人材の育成を目指していたといえる。そして、A社の海外研修制度は、国際的な人材を社内に育成するため、英語力の教化や多様性に対する理解力の向上の目的としている。英語力や多様性に対する理解力が向上すれば、外国人との円滑なコミュニケーションをとることができるようになり、A社の目指す人材となり得る。したがって、A社の海外研修制度とA社の宿泊業という業務に関連性はある(①)。

 

   イ, 他方で、上記の通り、A社の海外研修制度で得られるのは、英語力と多様性に対する理解力の向上である。そして国際化社会においては、他の企業、業種においても英語力と多様性に対する理解を有する人材は強く欲するところであり、A社の海外研修制度によりBが英語力と多様性に対する理解力を向上させれば、Bは他の企業において引く手あまたとなり得る。また、英語力と多様性に対する理解を有することを考慮し、より賃金等がより好待遇となる他の企業への転職も可能となることも考えられる。そうだとすれば、英語力と多様性に対する理解力の向上は、一生におけるB自身の価値を基礎づけるものとなるといえる。したがって、A社の海外研修の一般的通用性は認められる(②)。

 

   ウ, さらに、A社の海外研修制度においては、研修先となる大学・研究機関や専攻は社員の選択に委ねられており、BもA社の海外研修制度に自らの意思で応募し、C国の大学の大学院へ留学することとなっており、海外研修内容についてBは自由に決定することができる立場であった。また、Bは海外研修の間は、A社の全社員を対象とするオンライン研修以外は、A社の業務に従事することは求められず、学業に専念することができた。さらに、そのA社の研修も2か月に1回程度と頻度はかなり少なく、また時間も長くて3時間であり、長時間Bを拘束するものではなかった。またそのA社の研修はオンラインでなされることからある程度どの場所でも受けることができ、Bの負担は小さかったといえる。したがって、A社の海外研修の使用者の関与の程度は小さいといえる(③)。

 

(3)よって、①、②、③を総合的に考慮すれば、A社の海外研修は業務上の海外研修とはいえず、本件条項は実質的に「違約金を定め」たもの、あるいは「損害賠償を予定する契約」とはいえず、労基法16条に違反しない。

 

3, よってA社は、本件条項を内容とする誓約書に基づき、Bに対してA者が負担した海外研修費用の返還を請求できる。

 

設問2

1, G社に対する責任追及

(1)まず、FとG社は、労働者と使用者の関係にあり、G社はFに対して、FG間の労働契約における付随義務として、働きやすい職場環境を整備する義務を負う(労契法3条4項参照)。

(2)そして、本件においては、FはA社は経営するホテル内での清掃業務に従事していたが、同ホテルで働くE社従業員のDから、好意を持たれ、退勤する際に自宅近くまでついてこられたり、休日に自宅の付近を歩き回られたりしており、ストーカー被害を受けていた。またDは、ホテル内の業務中に、あえて備品室や客室でFと二人きりになる状況を作るなどしており、当該行為はFの恐怖でしかないものといえる。その結果、Fは、同ホテルでの業務中においては常にDの存在におびえながら、職務を行わなければならない状況にあったといえ、働きやすい職場環境であったとはいえない。それにもかかわらず、FからDの上記行動について相談されたG社は、状況を軽視し、Fが主張する前記のDの行為について更に調査をしたり、Fの職務場所の変更を検討したりすることはなかった。したがって、G社は働きやすい職場環境を整備する義務に違反しているといえる。

(3)よって、G社は、上記義務に違反しており、帰責性も認められることから、民法415条1項に基づき、Fの精神的損害について、賠償する責任を負う。

 

2, A社に対する責任追及

(1)まず、FはA社の経営するホテル内で業務に従事しているから、A社もG社同様、Fに対して働きやすい職場環境を整備する義務を負う。

(2)そして、Dの上記行為により、Fにとって同ホテル内が働きやすい職場環境ではなかったことは上記の通りである。

(3)もっとも、A社はそのグループ会社によるコンプライアンス違反行為の予防、対処のためにコンプライアンス相談窓口を設置していた。そして、同窓口の存在をグループ会社に周知しており、G社の社員にも実際に同窓口の存在が周知されていた。それにもかかわらず、G社はFからDの行為について相談された際に、Fに対しA社の相談窓口への相談を進めることはなかった。そうだとすれば、A社は、Dの行為によってFが被害を受けていることを知り得る状況になかったといえ、働きやすい職場環境を整備する義務違反に対する帰責性がないといえる。

(4)よって、A社はFに対して何ら責任を負わない。

 

【反省点】

・設問1で、最終的に特約付きの金銭消費貸借契約に着地すべきだった。

→誓約書に基づく返還請求って曖昧すぎる。

・A社が海外研修中も基本給を支払っている部分をどこに入れ込むかわからなかった。

・全体として設問1に時間をかけすぎた。

→設問2のG社の部分も時間がなかったにしろ、

民法415条1項本文に基づき責任を負わないか」と最初に示して、三段論法の形をとるべきであった。

・そもそもA社とFは雇用関係にないから、債務不履行責任は無理。

不法行為によるべきだった。

 

【予想評価】C~D

 

今回も個別的労使関係法が出ましたね。これは、試験委員は予備では労組法を出さない趣旨なのでしょうか(^ω^)

なお、来年こそ整理解雇がでます。4要件書かされます(予言)。

R5 予備試験論文 刑事系の振り返り

エドガーです。今回は令和5年予備試験論文の刑事系の振り返りをしていきます。

 

*刑法


設問1
1, Xを山小屋に閉じ込めた行為に、監禁罪が成立しないか。
  ↓
 「監禁」とは、人を場所的に拘束して、移動の自由を奪うこと。
  ↓
 甲は、Xを山小屋という場所に拘束して、Xの移動の自由を奪っている。
  ↓
 したがって、甲は、「人」を「監禁した」といえるとも思える。
  
2, もっとも、Xは甲が山小屋の扉をロープで縛り、中からXが出られないようにした時から、甲が上記ロープをほどいた間、熟睡しており、その間は移動する意思がなく、移動の自由は奪われてないのではないか。
 ↓
しかし、実際に、甲はXを場所的に拘束しているのであり、Xが移動の意思を有するか否かで、犯罪の成否が変わるのは不合理である。
 ↓
したがって、監禁罪の保護法益である移動の自由は、可能的自由で足り、実際に移動の意思を有することは必要ではない。
 ↓
よって、上記の通り、甲は、Xを山小屋という場所に拘束して、Xの移動の可能的自由を奪っており、「人」を「監禁した」といえる。

3, また、甲は監禁罪の故意を有する。

4, よって、甲の上記行為に、監禁罪が成立する。

設問2
1, Xの携帯電話機をXの上着のポケットから取り出し、自分のリュックサックに入れた行為に、窃盗罪が成立しないか。

(1)「他人の財物」を「窃取」肯定。

(2)もっとも、甲はXの携帯電話をXの遠く離れた場所に捨てる意思であったことから、不法領得の意思が認められないのではないか。
 ↓
不法領得の意思論証
 ↓
まず、甲がXの携帯を持ちだすことで、Xは携帯電話を使用することができなくなるので、①権利者排除意思肯定。
 ↓
そして、確かに甲はXの携帯電話をXの遠く離れた場所に捨てる意思であった。しかし、携帯電話機のGPS機能によって発信される位置情報を利用し、Xの親族等にXの死体の発見を困難にする意思があった。そして、②利用処分意思とは、財物から何らかの効用を得る意思があれば足りるとされているから、甲は携帯電話のGPS機能によりXの死体発見を困難にするという効用を得る意思があり、②利用処分意思肯定。

(3)よって、甲の上記行為に、窃取罪が成立する。

2, 眠っているXの首を両手で強く絞め付けた行為に、殺人罪が成立しないか。

(1)まず、人の首を強く絞める行為は、その者を呼吸困難に陥らせ、死に至らせる危険性の高い行為である。したがって、甲がXの首を強く絞めつけた行為は、殺人罪の実行行為性が認められる。そして、その後Xは死亡しているから、「人を殺した」といえる。

(2)もっとも、甲の上記行為とXの死亡の結果発生の間には、Xは首を絞めつけられ意識を失った後に、甲に証拠隠滅目的で崖に運ばれ、崖下に落とされるという介在事情が存在するが、甲の上記行為とXの死亡の結果発生の間には因果関係は認められるのか。
 ↓
因果関係論証
 ↓
まず、上記の通り、甲がXの首を強く絞めつけた行為は、死に至らせる危険性の高い行為である。
そして、確かにXの死因は、崖から落とされたことによって、頭部を地面に強く打ち付け、頭部外傷を負ったことにあり、介在事情の結果発生の寄与度は大きい。もっとも、人を死亡させた後に、崖の下に死体を落として証拠隠滅する行為は通常ありうることであり、異常性は低い。そうだとすれば、甲がXの首を絞めた行為により、崖からXを落とすという行為が誘発されたといえる。
したがって、甲がXの首を絞めた行為の危険性が、Xの死亡という結果として現実化したといえる。
 ↓
よって、甲がXの首を絞めた行為とXの死亡の結果発生の間に因果関係が認められる。

(3)ここで、甲はXの首を絞めた行為により、Xを死亡させたと認識しているが、実際には、Xは崖から落とされて、地面に頭部を強打したことにより死亡しており、甲には因果関係の錯誤がある。もっとも、甲の認識した因果関係も、実際に起きた因果関係も殺人罪の同一構成要件内で符号しているから、甲は規範に直面していたといえ、故意は阻却されない。

(4)よって、甲の上記行為に、殺人罪が成立する。

3, Xを崖下に落とした行為に過失致死罪が成立するか。
 ↓
甲は、まだ生きているXを既に死んでいると軽信して、Xを崖から落とし、Xに頭部外傷を負わせ、死亡させているので、「過失により人を死亡させた」といえ、甲の上記行為に過失致死罪が成立する。

4, Xの財布から、現金3万円を抜き取った行為に、窃盗罪が成立しないか。

(1)「他人の財物」を「窃取」肯定。

(2)もっとも、甲は、既にXは死亡していると誤信しているから、窃取罪の故意が認められないのではないか。
 ↓
ここで、死者には占有の事実も占有の意思もないから、死者の占有は認められない。もっとも、被害者の生前の占有は、①被害者を死亡させた犯人との関係では、②被害者の死亡と時間的場所的に近接した範囲内にある限り、刑法上保護されると解される。
 ↓
甲の認識では、Xと甲は死亡した被害者とその犯人の関係にある(①充足)。そして、甲がXの首を絞めて死亡させたと誤信した時点は午後6時20分であり、Xが現金3万円を抜き取ったのは、その5分後である午後6時25分であり、時間的に近接している。(場所的近接性はなんて書いたか不明)(②充足)
 ↓
したがって、甲は上記を認識していたといえるから、占有侵奪の意思があり、窃盗罪の故意が認められる。

(3)よって、甲の上記行為に、窃盗罪が成立する。

5, 罪数
甲には、Xの携帯電話機についての窃盗罪(①)、殺人罪(②)、過失致死罪(③)、Xの現金3万円についての窃盗罪(④)が成立し、①と④は包括一罪となり、③は②に吸収される。
そして、①と④の包括一罪と②は、併合罪となる。

 

【反省点】
・死者の占有の部分で、場所的近接性をテキトーに認定したこと。
→山小屋と崖は、歩いて100mという事情を使うべきだった。
・また、死者の占有は今回故意の中で問題となっているから、最後の占有侵奪の意思までの持っていき方に注意。

 

【予想評価】 願望A。まあ、B~C。


刑事訴訟法(全体的にあまり覚えていない…)


設問1

1, 下線部①につき、本件住居侵入・強盗致傷の事実及び本件暴行の事実で、甲を勾留することは、逮捕前置主義に反し、許されないのではないか。

(1)逮捕前置主義の論証(不必要な身柄拘束の回避目的)

(2)逮捕が前置されているかは、人単位でみるか、事件単位でみるか
  ↓
 刑訴法は、逮捕について「被疑事実」(なんか条文をあげた)や「犯罪事実」(なんか条文をあげた)という文言を使っていることから、事件基準。
  ↓
 また、同一の「事件」に当たるかは、身柄拘束の蒸し返し防止と基準の明確性の観点から、実体法上の一罪となるかで判断する。
  ↓
本件では、本件住居侵入・強盗致傷の事実と、本件暴行の事実は、実体法上の一罪となる関係にはない。

(3)したがって、本件では本件暴行の事実について逮捕が前置されていないから、本件住居侵入・強盗致傷の事実及び本件暴行の事実で、甲を勾留することは、逮捕前置主義に反し、許されないとも思える。

2, もっとも、逮捕前置主義の趣旨は上記の通り、不必要な身柄拘束を防止し、被疑者の保護を図ることにある。

そこで、本件につき、本件住居侵入・強盗致傷の事実につき適法に逮捕がなされ、勾留されるのであるから、本件暴行の事実であえて逮捕を前置すると、本件暴行の事実の逮捕期間の分、身柄拘束期間が長くなる。また、逮捕前置主義は、比較的短期の身柄拘束である逮捕を先行させ、その期間内に逮捕の必要性や嫌疑がなくなった場合は、勾留前に被疑者を釈放して、不必要な身柄拘束を防止することを前提にしている。しかし、別の事件につき適法に逮捕がされ、勾留される場合においては、逮捕を前置し、その期間に逮捕の必要性や嫌疑がなくなった場合でも、別の事件で勾留されているから、直ちに釈放されることにはならない。
 ↓
本件でも、甲は本件住居侵入・強盗致傷の事実について適法に逮捕がされており、本件住居侵入・強盗致傷の事実に付加して、本件暴行の事実で勾留しているから、逮捕前置主義の例外として、許される。

3, よって、裁判官は甲を本件住居侵入・強盗致傷の事実及び本件暴行の事実で勾留することができる。

 

設問2
1, 下線部②につき、甲を本件住居侵入・強盗致傷の事実で再勾留するものとして、再逮捕・再勾留禁止の原則の原則に反し、許されないのではないか。

(1)再逮捕・再勾留禁止の原則の論証

(2)もっとも、再逮捕は明文で許容され得ることが認められている(刑訴法199条3項参照)。
また、再勾留も逮捕に伴う手続きとして認められる場合があり得ると解する。しかし、厳格な身柄拘束期間の潜脱防止の観点から、その許容要件は厳格に解しなければならない。具体的には、①新証拠や罪証隠滅のおそれなどの新事情の出現より再捜査の必要性があり、②被疑事実の重大性等より、被疑者の受ける不利益と対比してもやむを得ない場合であり、③捜査機関に身柄拘束の不当な蒸し返しの意図がない場合に限り、再勾留は認められると解する。

 

(3)ア, 甲が釈放された後である同年10月6日に別事件で逮捕された乙が、本件住居侵入・強盗致傷について、甲と乙が共謀し、乙が実行犯となり、甲が換金する旨の役割分担して犯行に及んだことを供述した。また、乙の携帯電話機の解析によって本件住居侵入・強盗の事実につき、甲との共謀を裏付けるメッセージのやりとりが記録されていることが判明しており、乙の上記供述の信用性は高かった。そうだとすれば、本当に甲と乙の間で本件住居侵入・強盗致傷の事実について共謀がなされたかを捜査して確認する必要がある。
 したがって、本件では、①新証拠や罪証隠滅のおそれなどの新事情の出現より再捜査の必要性が認められる。

 

 イ, また本件住居侵入・強盗致傷は重大事件であり、社会的悪性が強いから、乙が再び身柄拘束を受けることとなる不利益と比較しても、再捜査をすることがやむを得ない場合といえる(②充足)。

 

 ウ, さらに甲は一回目の逮捕勾留では、一貫して黙秘しており、乙から得られる情報はなかった。それにもかかわらず、Pは甲の携帯電話機やパソコン等を解析したり、不審者に関する更なる聞き込みをしたりするなどの捜査を尽くしており、一回目の逮捕勾留において漫然と甲を身柄拘束していたわけではない。したがって、Pには、身柄拘束の不当な蒸し返しの意図があるとはいえない(③充足)。

 

4, よって、下線部②につき、甲を勾留することは再逮捕・再勾留禁止の原則の例外として許される。

 

【反省点】

・付加してなされた勾留請求の論点のところをもっと三段論法を意識して論述すべきだった。→だらだらと何を言いたいかわからない論述になってしまった。

・再逮捕・再勾留禁止の原則のところは、もっと②のあてはめを厚くすべきだった。→例えば、法定刑を引用する等。

→そもそも規範があいまいな部分も要改善。

 

【予想評価】 B~D(論点チックな問題だから予想困難)

 

 

今回は刑法も刑訴法も問題自体の難易度は低かったので、どこまで正確に書くかが重要になりそうです。それゆえに評価の予想もつかないですね(^ω^)

 

R5 予備試験論文 公法系の振り返り

エドガーです。今回は令和5年予備試験論文の公法系の振り返りをしていきます。

 

憲法

1  Xの取材源について証言を強制されない自由が侵害され、違憲でないか。
  ↓
(1)
 報道の自由憲法21条で保障されること
  ↓
 取材の自由が憲法21条(の趣旨)より十分尊重されること
  ↓
 Xが取材源を乙であると公表させられた場合、Xの取材に応じても、取材に応じたこと、取材の内容をXが公表すると考え、取材を断る者が増加し、Xの将来の取材が困難となり、将来における取材の自由が侵害される
  ↓
 上記Xの自由は、取材の自由に含まれる。
(2)
 上記Xの自由は、訴訟において取材源の証言を強制させられた場合、制約される。
(3)
 かかる制約は正当化されるか。
 ↓
 Xの取材内容は環境問題に関する事項で公共性があり、一般人の関心が高いもの
  →Xの取材の自由、ひいては報道の自由の重要性高い
 ↓
 制約は強度(?)
 ↓
 厳格審査
(4)
 取材源の証言させる目的
 ①公平な裁判所の実現
 ②甲の乙に対して守秘義務違反として損害賠償を請求することを可能にする

 → ①必要不可欠肯定(∵甲の裁判を受ける権利(憲法32条)の尊重)

 → ②必要不可欠否定(∵裁判において積極的に認められるものではない(ここは謎))

 手段
 民訴法197条1項3号が職業の秘密について証言拒絶を認めている→公平な裁判所の実現は、他の権利との調和のもとで達成される。
 Xの上記自由は重要かつ証言を強制させられたときのXの不利益は大きい。
 ↓
 最小限度性否定
(5)
 よって、違憲

2 甲の反論
 (ア)Xの乙に対する取材方法は、過激なものであり、取材の自由の範囲を逸脱するものである
 (イ)Xの動画により、甲の製品の不買活動が起こるなど、甲の経営に与える悪影響が大きい→損害賠償により保護されるべき→目的②も必要不可欠


3 私見
 (ア)について
 ・Xはフリージャーナリストであり、インターネット上で動画をあげている。また、環境問題に鋭く切り込むXの動画は若い世代に関心を集め、インフルエンサーとして認識されている。
 →公的な機関とは異なり、ある程度踏み込んで取材をすることが期待されている。
 ・確かに、乙の自宅まで執拗に押し掛けていて取材方法としては過激な部分はあるが、SDGsに積極的にコミットしていることで知られる甲の実態を明らかにするという、真に環境問題について動画視聴者に伝えるという目的であり、乙を害する目的なし。
 ↓
 Xの取材方法は、取材の自由の範囲を逸脱しない。

 (イ)について
 甲の製品の不買活動が起き、損害が生じたのは、甲がSDGsに積極的にコミットしているとアピールしているにもかかわらず、C国から原材料となる木材を輸入していたという実態があり、それが国民の反感を買ったからである。→甲に帰責性がある。
 ↓
 目的②は、必要不可欠ではない。

 よって、Xの主張が認められて、違憲

【反省点】
・目的手段審査をしてしまったこと。→NHK記者証言拒絶事件を薄らしか知らなかったことはまだしも(←大問題)、他の取材の自由の事件が比較衡量で違憲審査していたことを踏まえて、比較衡量で書くべきだった。
・目的手段審査するにしても、厳格審査はやりすぎた。→取材の自由は、憲法21条より尊重されるにとどまるのに…。
・目的②が意味不明→これも比較衡量にすれば単に甲側の事情に置いとけば足りた。
三者間の書き方が曖昧。

 

【次に向けての戒め】
判例を読む。これにつきる。

 

【予想評価】 F。良くてE。

 

行政法

設問1(1)
 Cは、本件許可処分の名宛人ではない。→Cは、「法律上の利益を有する者」に当たるか
  ↓
 法律上保護された利益説論証
  ↓
 (あてはめ)
・処分根拠法規は、法7条1項
 →許可制の目的は、一般廃棄物処理業は適切に行われなければ、周辺の衛生状態が悪化し、住民の健康と生活環境に被害を生ずるおそれがあり、これを防止する点にある。

・既存の一般廃棄物収集運搬業者によって適正な収集及び運搬がされていることを踏まえて法6条に規定する一般廃棄物処理計画が策定されている場合には、新規の一般廃棄物収集運搬業の許可申請を法7条5項2号の要件不充足として不許可とすることが適法
 →一般廃棄物処理業は、上記のおそれがある→既存業者で、適正な収集、運搬がされており、そのことを踏まえて計画が策定されている場合には、特に現状に変更がない限りはその現状を維持することが、上記おそれの防止として望ましいという趣旨。
 →新規事業者参入によって、過当競争の結果として経営状態が悪化し、一般廃棄物処理業務に支障が生じる→新規参入により、上記被害のおそれあり。
 ↓
 A市でも、「一般廃棄物の適正な処理を実施する者に関する基本事項」として、「一般廃棄物の収集運搬についてはB、Cの2社に一般廃棄物収集運搬業の許可を与えてこれを行わせる。」と記載するとともに、「大幅な変動がない限り、新たな許可は行わないものとする。」とされていた。また、この2社体制の下で適切な処理運搬体制が維持されていた。

→そうだとすれば、C社の営業上の利益は、一般廃棄物処理業の適正な実施による公益保護のために、一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益として、法は保護する趣旨。
 ↓
 C社は、「法律上の利益を有する者」に当たり、原告適格肯定。

設問1(2)
 狭義の訴えの利益(行訴法9条1項かっこ書)とは、当該処分を取り消す必要性をいい、その存否は、取り消しによって除去すべき法的効果の有無で判断される。
 ↓
 法7条2項は、一般廃棄物処理業の許可の更新を定めている。→許可の更新は、当初の許可を前提としてなされるもの→当初の許可を取り消せば、許可の更新もなくなる。
 ↓
 本件でも、令和4年3月31日が経過し、本件許可は失効しているが、同年4月1日に本件許可が更新されている。→更新による法的効果が残存している。
 ↓
 本件許可処分の取り消しによって除去すべき法的効果あり→訴えの利益肯定

設問2
・法6条に規定する一般廃棄物処理計画の策定及び内容の変更については、専門技術的、公益上の判断の必要性あり→A市長に裁量あり。
 ↓
 もっとも、旧計画の「発生量及び処理量の見込み」について、将来の人口及び総世帯数の減少予測より、浄化槽汚泥の今後の発生量及び処理量の減少が見込まれる旨の記載があった。そして新計画においても旧計画の基礎とされた将来の人口及び総世帯数の減少予測は維持されているにもかかわらず、新計画では浄化槽汚泥について、発生量及び処理量の大幅な増加が見込まれる旨が記載された。
 ↓
 A市長の判断は、重要な事実の基礎を欠くものであり、裁量の逸脱、乱用あり。
 ↓
 それによって策定された新計画に基づいてなされた本件許可処分は、法7条5項2号に該当しない→違法

・また、本件許可処分の名宛人Dの代表者は、Bの代表者の実弟であり、BとDは業務提携契約を締結し、Bは人的、物的にDを支えている
 ↓
 Dは、単独では法7条5項3号に該当しない→違法

【反省点】
・設問1(1)の原告適格に時間を使いすぎた。→設問2の内容がスカスカに。
・設問2の法7条5項2号の要件不充足はもっと丁寧にすべきだった。
→(ⅰ)まず、A市長が競争性を考慮に入れていることを指摘すべきだった。
 (ⅱ)次に、新計画の裁量逸脱濫用→本件許可処分の法7条5項2号の要件不充足への論理の繋ぎ方を意識すべきだった。

 

【次に向けての戒め】
論述のバランスを考える。
裁量論の方が点が取りやすいことを意識。

 

【予想評価】 D

 

令和4年に引き続き公法系は失敗しているので、次の機会には高評価のとれる答案を目指したいです。

 

R4 予備試験論文 民事系の振り返り

エドガーです。今回は令和4年の予備試験論文の民事系の振り返りをしていこうと思います。

 

民法

・再現

設問1(1)Bの請求→民法563条2項2号

      ⇩

      要件にはあてはまる。

      ⇩

     【事実6】の留意

→請負人のやむを得ない事情によって目的物の客観的価値が上がっている場合は当事者の公平の観点から、低い価値の方にすることに対する注文者の特別の利益があるとの特段の事情がない限りは減額請求は認められないという、よくわからない規範を定立。

      ⇩

      あてはめ→Bには特段の事情あり

      ⇩

      減額請求は認められる。

 

設問1(2)Bの請求→民法564条、415条

      ⇩

      Aは、再塗装を行う旨の申し入れをしている

      ⇩

      他の業者に頼んだとしても、結果は変わらないことから、Aの

      申し入れを断ることは権利濫用に当たる。

      ⇩

      Bの請求は認められない。

 

設問2 長期取得時効(民法162条1項)の要件検討

    ⇩

    起算点は、令和9年3月1日→従業員による間接的な占有を肯定

 

・振り返り及び所感

設問1については、全くわからなかった。(1)では独自の規範を定立した(げ、現場思考だし…)点、(2)では権利濫用の一般条項で処理した点が、論外。今後はよくわからなくても、どこかの条文の文言にひっかけてうまく事実を使っていきたいと思った。

設問2については、「新たな権限」の論証の使う場面を誤って理解していたため、本問では書かなかった。これを落としたのは痛かった。

 

≪商法≫

・再現

設問1 利益許与

    ⇩

    120条2項後段を否定

   

    任務懈怠責任(423条)

    ⇩

    Aらの任務懈怠を認定→善管注意義務

    ⇩

    423条責任は認められる

 

設問2 本件訴えは、株主代表訴訟(847条1項)

    ⇩

    甲社には、監査役あり

    ⇩

    386条2項1号より、提訴請求は監査役になさなければならない

    →本件ではAらに対して提訴請求しているから、これは違法か?

    ⇩

    しかし、Fは兼任禁止にあたる。

    →子会社の取締役になることを承諾した時点で、甲社の監査役

       辞任したこととなる。

    ⇩

    監査役がいないため、上記提訴請求は適法

    

    仮にFが監査役として存在していたとしても、提訴請求の趣旨から

    Aらにおいて責任追及の訴えの当否について検討する機会があれば

    目的は一応達せられる。

    ⇩

    本件では、Aらに提訴請求がなされているから、検討する機会が

    与えられていたといえ、適法。

 

・振り返り及び所感

利益許与の理解が足りていなかったため、設問1で120条2項後段が否定されたら、もう利益許与は成立しないと勘違いしていた。これが商法における最大の論外ポイントである。

さらに、Aらの中に取締役でないCもいるのに、それに気づかず423条でゴリ押した点もよくなかった。問題文をしっかり読むことは大事。はっきりわかんだね。

設問2においては、論証集で見たことがあったので、それを思い出しつつ書いた。書いたこと自体は間違っていないと思うが、時間が足りず、充実した論述ができなかったと感じた。兼任禁止に関しては、条文が見つからなかった。(´;ω;`)

 

民事訴訟法≫

・再現

設問1① よくわからなかったため、何を書いたかも不明。

 

設問1② 固有必要的共同訴訟の認定

     ⇩

     しかし、Xの構成員の中に反対者がいる

     ⇩

     被告に加えれば合一確定の要請は満たされる。

 

設問2前段 重複訴訟の禁止(142条)の趣旨

      ⇩

      当事者の同一性、審判対象の同一性

      ⇩

      訴訟物が異なるため審判対象の同一性はないのでは?

      →142条の趣旨が及ぶ。

 

設問2後段 既判力について書いた。時的限界には触れられなかった。

 

・振り返り及び所感

団体が絡んでくる当事者適格や代表の問題は、よくわかっておらず、今回はそこがダイレクトに問われたので、設問1①はお気持ちを表明することしかできなかった。これを機に復習していきたい。

設問1②では、固有必要的共同訴訟を当然のごとく認めてしまったので、固有必要的共同訴訟にあたるか否かの論証を書けるようにしたい。

設問2は、設問1よりもとっつきやすい問題であった。多くの受験生が落とさないと考えられるから、定義等、細かい部分までしっかり論述していかなければならないところ、その点が不十分であった。

民訴はやっぱり、よくわからない。

 

・民事系全体を通して

全体的に理解があまくそこで大きく点数を落としていると言える。受験政策的には、守りの教科にして、他の教科で民事系をカバーしていくのがよいのかなと思ったり。

なんにしろ、来年までになんとか点数をとれるようにしていきたい。

 

・予想される評価について

民法民事訴訟法はFが濃厚。商法は耐えているかもしれない。

 

≪今回の名言≫

『最高に到達せんと欲せば最低から始めよ。』 シルス

 

 

        

   

 

R4 予備試験論文 労働法についての戯言

エドガーです。今回は令和4年予備試験論文の労働法について戯言を述べていこうと思います。

 

今回、予備試験で初めて選択科目が出題されることになった。初めてということで、さすがに試験委員様も手加減をしてくれると思っていた。

 

そこで、私、エドガーは

「さすがに、労契法15条の懲戒か労契法16条の解雇がでるやろなあ。まあ、労組法が出る可能性はあるし、労組法は論証だけは見とけばええやろ~。さすがに、初っ端から有期労働者とかは出るはずないわ~(´^ω^`)ニチャア……」

という心理状態でした。

 

そして試験当日、問題文には

 

Xは、平成29年4月1日からY社の路面店A店で販売担当従業員として勤務する有期労働契約社員である。

 

と書かれていた。

 

エドガーは、めのまえがまっくらになった。」

 

それを示すのが下の画像である。

 

 

過去の俺よ。「19条1号の要件解釈」だけでどうやって再現答案を作れと言うのだ。なんなら、2号に該当するらしい。(実際は18条も併せて問題になってたらしい。もちろん、そんなことは書けていない。)

 

もちろん、有期労働者の雇止めについては、司法試験において出題されているし、重要な事項であった。1号は実質無期型、2号は合理的期待型と類型化されることも満足に知らなかった私にも落ち度はある。そうだとしても、初っ端から有期労働者出すのは違う(違わない)。

 

あてはめは頑張って書いたので、試験委員様、勘弁してください。

 

なお、来年こそは解雇がでます。なんなら整理解雇で4要件書かされることになります。間違いありません。

 

≪今回の名言≫

「すべての人は学びたがるも、誰もその対価を払わず。」 エヴェナリス

 

 

 

 

R4 予備試験論文 刑事訴訟法の振り返り

エドガーです。今回は令和4年の予備試験論文の刑事訴訟法の振り返りをしていきます。

 

・再現

設問1

1.本件捜索差押許可状の効力で、第三者の物を捜索、差押えできるか。

  ⇩

  刑事訴訟法222条1項、102条2項

  ⇩

  「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合」の検討

  ⇩

  適法

 

設問2

1.乙のボストンバッグに本件捜索差押許可状の効力が及ぶか。

  ⇩

  宅配物の判例の論証

  ⇩

  肯定

 

2.効力が及ぶとしても、乙に対する羽交い締めは適法か。

  ⇩

  「必要な処分」の定義

  ⇩

  あてはめ

  ⇩

  適法

 

・振り返り及び所感

まず、大きな論外ポイントが「場所」に対する令状で「物」を捜索することができるかという論証を書けていない点である。もともと、「場所に対する令状で物を捜索できるのは当たり前すぎだろー」とか考えていたため、この論証の論じる実益がわかっていなかった。しかし、Twitter有識者からいろいろ意見をもらった結果、平成29年の司法試験採点実感にもある通り、論じる必要性があった。以下、平成29年司法試験の採点実感(刑事系科目第2問)の引用。

刑事訴訟法が,捜索の対象を「身体」,「物」,「住居その他の場所」に分類し,これに従って捜索令状に処分の対象を特定して記載することを要求していることとの関連で問題となるとの問題意識が示されていない答案が少なくなかった。本件の論点についての基本的な考え方を示すと,「場所」に対する捜索令状の効力は,当該場所において通常使用に供される「物」との関係でも,それが当該「場所」に妥当する管理支配に服しているという意味において,当該「場所」に付属する,あるいは包摂されるものと言えるために,当該「物」にも及ぶと考えられる一方で,「場所」に及ぶ管理支配を排除する態様で第三者が管理支配する「物」については,当該令状によって制約されることとなる管理権に服するものでない以上,捜索すべき「場所」にあるとしてもその効力は及ばないと考えるのが一般的であろう。

 

「場所」に対する捜索差押許可状の効力が「物」に及ぶのかという問題意識を何ら示すことなく,直ちに刑事訴訟法第102条第2項を持ち出して,「ハンドバッグ内に差し押さえるべき覚せい剤等が存在している蓋然性が高いので捜索が許される。」旨論述する答案が相当数見られた。当該令状の効力がハンドバッグにも及ぶかどうかを検討し,効力は及ぶとした上で,更に実際に令状により処分を実施する場面では,同条同項が言わば加重要件として適用されると考え,本事例ではハンドバッグ内に差し押さえるべき証拠が存在する蓋然性が否定されれば捜索は許されないし,蓋然性が認められれば捜索は許される,との考え方は一つの考え方として成立し得るとしても,前記問題意識を持たずに,直ちに同条同項を持ち出して検討している答案は,捜索について正しく理解していないことをうかがわせる。

 

これは、試験委員に私が捜索について正しく理解していないことがばれてしまったということになる。試験委員からお墨付きの論外がここに誕生した。

さらにキャリーケースのチャックをあけたことも「必要な処分」として言及すべきだった。

設問2については、宅配物の判例の論証を書くまではよかったが、「受領した」といえるかどうかを本問の事例を踏まえて論じる必要があったかもしれない。(この辺りは、よくわかっていない。)

また、羽交い締めについては、「必要な処分」として適法かどうかが問題となるところ、Twitterでは羽交い締めを適法としたのは論外と言われているのを目にしたが、真偽は不明。適法にするにしろ、違法にするにしろ、理由付けが充実していればどちらの結論でもよいのではないか。自分自身の羽交い締めに対する考えが一般常識とかけ離れていないことを願いたい。

解答速報や他の方の再現では、甲を立会人とした点や甲に対する令状呈示で足りるのかという点にも触れているものがあった。個人的には、下線部の部分のみ論じれば足りるのではとか思っている。もし、そこまで論じることを要求するのならば、試験委員様、その部分にも下線部を引いてください。

 

・予想される評価について

設問1の論外さが尋常じゃないので、F。耐えればE。

 

こんな感じですかねー。今回の問題は、平成29年の司法試験とよく似た問題だったので、予備試験の対策においても司法試験の過去問までも手を伸ばすべきだと言えそうです。採点実感にはやっぱり、ためになることが書いてありますね。

 

≪今回の名言≫

『何事も達成するまでは不可能に見えるものである。』 ネルソン・マンデラ